世界的な高金利と以前から見受けられる脆弱(ぜいじゃく)性の組み合わせが、引き続きグローバル金融市場の安定に対する脅威だとシンガポール通貨庁(MAS、中央銀行)が警告している。
MASは金融安定に関する年次報告で、米国で3月に相次いだ銀行破綻に見られるように、各中銀が制限的な金融政策を維持すれば、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期に積み上がった脆弱性が露呈する可能性があると指摘。
過去1年間に多数のデフォルト(債務不履行)が発生した新興国市場は、公的債務リスクの深化に直面する恐れがあり、これがリスク回避と資金流出につながり得るとの見方も示した。
金融の安定性に対するその他のリスクとしては、地政学的緊張の高まりや気候変動、イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争、ロシアがウクライナで始めた戦争、中国経済の減速などが挙げられるという。
それでも、シンガポールは厳しい環境に対処する上で良好な立ち位置にあるとMASは説明。銀行の信用力は引き続き高く、ほとんどの企業や家計でローンの延滞が大幅に増加することもなく、利上げの影響を乗り切っているとしている。